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Gamelan Marga Sari -Blog-

*ガムラン マルガサリ*のメンバーによるブログです.
カエルオールナイトピクニック
5月28日
台風が接近して、雨が降り続いている。夕方からスペース天で行われていた7月の浜松公演のワヤン(影絵芝居)練習を、まずは見学。演目はデウォ・ルチ、ダラン(人形遣い)はロフィットさん。演奏は神戸から岐阜までのガムラングループの混成メンバー。永遠の生命を得る水を求めて森や海に出かけた主人公が、最後には内なる神である自分の分身と出会う物語。雨の音が時折激しくスペース天のトタン屋根を叩く。湿気がこもった元寒天小屋に、森羅万象を表すカヨン(生命の樹)の影が、クリル(スクリーン)から外れて大きく揺れている。カエルの声とワヤンの上演はつながっているというのが、僕の直感なので、これ以上無いカエルの会のプロローグ。

10時すぎにワヤンの練習が終わったので、我が家へ移動。10時池田駅発の最終バスに乗って大学院生で音遊びの会もやってる中島さんがやって来たので、この日のオールナイトカエルピクニックの参加メンバーは7人。他には、ジャワ舞踊を習っているユミコさんとヨシコさん、デザインの仕事をしているカコさん、亀岡の高齢者施設で畑仕事をしていてバレエも踊るリコさん、堺のデイサービス祥の郷のパンクな施設長テッペイさん、そして僕。イウィンさんとブナは、カエルの声を聞きながらもう寝ている。彼らは、毎日夢の中でカエルとピクニックをしているのだろう。

まずは豊能町の航空写真地図を見ながら作戦会議。我が家の辺りは、西と東の山に囲まれた盆地になっていて、国道423号線が南北に貫いている。盆地は真ん中辺りで山が狭まり砂時計のようになっている。まずは、砂時計の下の部屋から歩いてみることにした。国道から山にかけて棚田が伸びている。何度かカエルの音を聞きに行っているのだが、この辺りはなんとなく静かなのだ、この日もそうなのか確かめたかった。


大きな地図で見る

11時すぎに、LEDの懐中電灯ひとつでピクニック開始。集落の端に、ブナが毎朝6年生のチアキちゃんと待ち合わせる角がある。その向こうは、三日月型のいびつな輪郭線を持つ10枚足らずの棚田がある。赤米も植えられているこの棚田はきっとすごく古いんじゃないだろうか。何百年も田植えが続いているってことは、何百年もカエルが鳴いているってこと。ここのカエルはひと際にぎやか。毎朝通りかかるので、なんとなく親近感が互いにあるのかもしれない。親友と深夜に会うと興奮するものだ。前を通りかかるとセンサーで車庫が光る家を通り過ぎると、杉林に入る。真っ暗だ。もちろん月も出ていないし、小雨が降り続いている。

杉林を出ると棚田が広がっている。けれど、カエルの声はほとんど聞こえてこない。傘にあたる雨粒ばかりが響く。どんどんと棚田を上がって行って、折り返す辺りの道で立ち止まる。雨、水の流れる音・・・、しばらく待っているとカエルが鳴き始めた。そんなににぎやかではないけれど・・・、僕らを警戒していたのだろうか。棚田の南側をぐるっと回って、ちょうどくびれにある高台から砂時計の下の部屋の全景を眺めた。山の上半分は霧に覆われ、田んぼの畦の黒い盛り上がりが、雨でまだらになった水に幾重にも魅力的なカーブを描いている。砂時計の底には、霧の向こうで黄色い信号が点滅している。去年のカエルの会の言い出しっぺである砂連尾さんに電話をかけて、カエルの声のコラボ。反対の耳元では、高槻のカエルが鳴いている。

くびれの一番狭くなったところに、太歳神社の参道があって鳥居がある。大きな夫婦杉、小さなお地蔵さん。左手の池にはモリアオガエルがいて、たぶん次の満月に何十ものソフトボールのようなタマゴを木の上に生む。気の早いのが、シダの後ろにふたつだけ生んでいるのをこの間発見した、という話をみんなにする。もう少し歩きたかったが、まだまだ先は長いということで一旦帰宅。1時間30分ほどのセッションだった。

すこし飲んだり食べたりしながらおしゃべり。なぜか今回は、ケアに関わる人が多い。窓を開けて、カエルの声を聞きながら。カコさんは、次の日も仕事ってことで、1階へお休みに。話は途切れなかったが、2時すぎに2回目のピクニックへ。

今度は、砂時計の上の部屋へ。あきらかにさっきよりもにぎやか。でもトノサマガエルの時間は終わったみたい。全方向に棚田が広かった辺りで、自由時間。各自、思い思いにお気に入りの場所を探す。僕もお気に入りの場所を発見。山の陰になった濃い闇に銀色の丸い玉が水面の少し上を点滅しながら飛び回っている。時折、竹やぶに金色の獣の目が光っている。空から降る雨が、水の中のカエルとの距離を近づけてくれているようだった。雨は小降りになっていた。再び集合して、みんなでずんずんと、イチゴのハウスを越えて、シイタケのハウスも越えて、棚田の上の方を目指す。最後の家は、水出さんという。その少し先の最後の棚田で振り返って、カエルの音を確かめる。もう少し行って、森を越えれば、アナザーワールドがあるけど行く?って、僕が聞くと。みんながうなずいている。

ブナが2歳の頃、寝付きが悪いと夜中に車であっちこっちドライブをした。この辺りでフクロウを見たっけ。真っ暗な山道をクネクネと進む。森の向こうからシャウシャウと聞こえてくると、空が開けていた。雲がすこし光っている。坂の上の見晴し台ようなカーブから前方に棚田が下って!いる。背中合わせになったこちらの国では、トノサマがまだお目覚めだった。鴻応山のこちら側へ戻ってくると、山の端の闇が薄くなり始めていた。銀色の玉は、ますます軽やかに飛び回っている。空からは銀色の線が田んぼに輪っかを描き続けている。

戻ってくると4時を回っていた。ね~む~た~い~。毛布をかぶって、みんなでうつらうつら。窓の外は白み始め、急速にカエルの声が遠のいていく、ような・・・。「行くよ、行くよ。起きて、起きて。」とカコさんが上がって来た。やる気満々である。雨は再びきつくなっている。カコさんは、あっという間に用水路の近くまで行っている。白鷺が低空飛行して、舞い降りる。ああ、もう鳥の時間。ツバメが急旋回している。本降りの中、しばし立ち尽くす。立ち尽くすと、カエルの声が鳴きはじめる。雨に身をまかせ、まわりに向き合うと、耳が開きはじめるのか。耳が開いて、聞こえはじめるのかもしれないし、あるいは、開いたのを感じ取ったカエルが鳴きはじめるのかもしれない。雨降りの、早朝の、田んぼに、立ち尽くす、人たち。
(佐久間新)


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≪この記事へのコメント≫
カエルナイトコンサート
私までカエルナイトピクニックに参加したかのような、ときめきに満ち溢れた企画に羨ましくもあり、こんな大人たちがまだいたことに感動する

カエルの声の重なりと、鳥の声との交代の時間なるほど…早起きがすごく楽しみになったし、雨の日が嫌いでなくたった。
白い綿菓子のようなカエルの卵が木にぶら下がったのを、『綿菓子の花がさくんやね』と、ショコラが子どもの頃言ってたっけ

きれいな描写にうっとりしつつも、カエルの声や雨音までも聞こえてきました。銀の糸が私の心にまで突き刺さり、柔らかな気持ちになりました。
2011/05/31(火) 18:11 | URL | くりりん #-[ 編集]
くりりんさん
来年もやりますよ!
来てくださった皆さんにも感謝!です。

来年はカエルの着ぐるみとかお面とかかぶって、カエルに気づかれないようにしようかな・・・。

次の満月の晩に、
池のほとりに行ってみるつもりです。
2011/05/31(火) 23:40 | URL | さくま #JvQfqRII[ 編集]
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