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Gamelan Marga Sari -Blog-

*ガムラン マルガサリ*のメンバーによるブログです.
「SANZUI」 中之島、そしてたんぽぽ
日記に書きたいことが山のようにたまっていく。順番に書きたいのはヤマヤマだけど、どんどんたまっていくので、少しずつ書いてみよう。時間が前後してややこしくなっていきそうだが・・・。

前回は、ヨーロッパへ出発する前で終わっている。ものすごく簡単に書くと、それから出発して、オーストリア?ハンガリー?オーストリア?フィンランドへの旅をした。最後は、ウィーンからの飛行機がキャンセルになって、ヘルシンキ泊になり、翌日少しヘルシンキを散策し、9月30日9時前に帰国した。すると、10時過ぎにインドネシアから芸術大学の一行6人が来日して、その人たちと合流し、それから共同生活がはじまり、10月3日は中之島公会堂で、4日はたんぽぽの家で公演し、今に至っている。

この日々のことは、なんとか追々書いていこう。

さて、昨日と今日の公演のこと。特に「SANZUI」のこと。
「SANZUI」とは、
音楽とダンス 演奏することと踊ること 音楽とそうでないもの ダンスとそうでないもの 意図と偶然と表現 
などの境界を、僕がジャワ舞踊をやりながら気づいた重要なこと「風に吹かれる木になってみる」「波に揺れるコンブになってみる」、ということをヒントに編み出した「振り子奏法」や楽器本来が持つ最高の音を引き出すための「振り子バチ奏法」及び「落下奏法」とダンスで構成された作品。タイトルは、ジャワ舞踊の重要なキーワード「BANYU MILI(水が流れる)」からイメージを広げ、さんずい編を持ついろんな漢字を、音や動きを深めるヒントにしていることに由来している。

10月3日の中之島公会堂、今は中央公会堂っていうのかな?、で初演を行なった。プログラムには、世界初演!となっている。事実である。中之島国際音楽祭の1演目だ。公会堂の一番てっぺんにあって、ステンドグラスの天窓から柔らかな光が漏れる壮麗なホールに満杯の400人のお客さんだった。ジャワの古典曲と宮廷舞踊「スリンピ」が、ホールの空気を重厚かつしっとりとさせていた。

中之島での「SANZUI」で、僕は、なにかうまく回らない中でもがき苦しんだ。
会場に、散らばる楽器以外の微妙な音、遠くでバタンとしまるドアが、僕の心を波立たせた。400人の観客の戸惑う視線、あるいはそれを勝手に心配する自分の心。集中しなければと思えば思うほど乱れる心。即興で踊りたいのに、自分で決めてしまっているいくつかの動きが手かせ足かせになること。そんな中でも、なんとか立ち向かっていこうとする自分。自分の持っているイメージからずれていくことに対する不安。そんなものがないまぜになっていた。

本番が終わって少しして楽屋へ戻ると、重たい何かがのしかかってきて、からだが床にめり込んでいった。

前日のリハもずいぶん苦労したが、最後の最後に、静まり返ったホールの中で、「これだ!」といういい感じがつかめた。楽器の音、演奏者の衣擦れ、床のきしみなどひとつひとつの音がクリアーに聞こえ、その音が自分のからだにわずかなズレを作り出し、そこからうまく揺れを作り出し、その揺れを少しずつ広げていくと、その波がまた音にフィードバックされていき、その音がまた動きにフィードバックする、そんな感じ。

そのよかったイメージと本番との差異が、僕を苦しめたのかもしれない。楽器の音以外も音楽だと言いながら、会場に散らばる音を受け入れることが出来なかった自分の気持ちの持ちようも良くなかったのだろう。400人のおそらくマルガサリのことをよく知らないであろう観客のことを意識しすぎたこと、演目の前のおしゃべりで、もっとリラックスしていい空気を作れなかったこと、そんなことも良くなかっただろう。公演が終わってから、反省が後から後から湧いてきた。そういったことが出来ていない姿を、大勢の人の前に晒してしまったといことが、重みとなってからだを床にめり込ませていく。

しかし、即興とはそういうことなのだ。そんなうまく行かないスリリングこそが即興なのだ。僕は、そのうまく行かないことのスリリングを味わってでも、即興にこだわっていきたいのだ、そう思えるようになって、なんとか立ち上がることが出来た。

10月4日。たんぽぽの家で、「SANZUI」の再演を行なった。ここは、月に2度訪れているし、観客は見知っている顔も多く、すごく暖かい。今日は、その場にあるすべての音や動きを受け入れようと思うことが出来た。とにかくリラックスして、感じて動こうと決めた。うまく音とからだが流れはじめた。途中で、障碍のあるアーティストである山野さんが客席から飛び出てきて踊り出した。僕は、「沫」や「瀑」になって、山野クンとぶつかり合った。途中からは、インドネシア芸術大学のスニョト先生とダンスを交代して、僕は楽器に入った。最後は、スニョトさんが床に転がって、僕とくんずほぐれつになった。波にもまれたコンブになっての大団円だった。

全身にのしかかった重みがずいぶんと軽くなった。明日は、大阪市立大学で夕方からコンサートだ。
(佐久間新)

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Comment
≪この記事へのコメント≫
ユカさん、ミイさん
拍手コメントありがとうございます。
これにうまく返事する方法がよくわからないので、ここで返信します。

即興で踊っていると、集中しながらも結構いろんなことを考えるときもあります。感じながら踊るのが、僕の場合、一番重要ですが、それでもいろいろ考えます。

で、時にうまくいかないこともあるんです。でも、そのうまくいかないところにも、リアリティ感じて、うまくいかないことを受け止めながら踊れたら、いいんだと思います。


前に、タンポポの家の伊藤愛子さんと踊ったときに書いた文章です。


そうそう、11月8日にスペース天でコンサートをします。「SANZUI」もやります。

・・・ ・・・

即興のダンスを踊る時、僕は、周りの環境や他者の動きを鋭敏に感知し、次の展開をめまぐるしく考える。

没入する
そこから抜け出し、上から俯瞰する
緊張をひらりとかわす
他者と共振し、大きな渦を作る
渦をスパッと断ち切る

そんな自由自在な存在になれれば、最高だろう。
2009/10/20(火) 15:18 | URL | さくま #-[ 編集]
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