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僕の先生の先生
5月5日、ジョグジャでフィールドワークをしている岡部政美さんからメールがあった。
スナルトモさんが亡くなった。消化器系の病気でしばらく入院していたのは知っていたが・・・。ジャワ舞踊ジョグジャ王宮スタイルの大名人。僕のジャワ舞踊荒型の先生、サンティヨさんのお父さんである。

スナルトモさんは、芸術高校(SMKI)の元副校長。弟は、スナリヤディさんとスナルヨさんで、ともに芸術大学(ISI)の先生だ。息子のサンティヨさんは教育大学の先生。家系的にみな、荒型の仮面舞踊(クロノ・トペン・セワンドノ)や猿のヒーロー(ハヌマン)や人形振り(タリ・メナッ)など、キレのある大胆な動きが必要となる舞踊が特に得意だ。キャラクターへの入り込みもものすごい。人形振りの舞踊を踊る時は、ギッと目を見開き、瞬きもしない。完全にキャラクターが乗り移った人形になりきり、ゼンマイが目一杯巻かれた機械仕掛けの人形のように、エネルギ?をみなぎらせて、舞台狭しと踊り回る。

スナルトモさんと最初に出会ったのは、留学して間もない頃だった。

僕は、芸術大学(ISI)の他に、プジョクスマン舞踊団でもレッスンを始めていた。舞踊団代表、サスミントさんの奥さんのスティアさんにいろいろと面倒を見てもらっていた。舞踊団では優型を集団レッスンで習っていて、荒型の個人レッスンも始めたかったので、誰に習ったら良いか聞いてみた。すると、当時芸術高校の副校長だったスナルトモさんを紹介してくれた。

芸術高校を訪ねて、舞踊を習いたいと伝えた。
すると、

「忙しいからダメだ。」
という答えだった。

なんとか頼みます、と粘ると、
「しょうがない。だったらワシのせがれに習いなさい。」
と言ってくれた。

それで、サンティヨさんとのレッスンが始まった。プジョクスマン舞踊団のプンドポを借りて、汗だくのレッスンだった。身長160センチに満たないサンティヨさんの素早い動きについていくのは、本当に大変だった。小柄でやせていたが、足は大きかった。サッカーが大好きで、ジャワの人には珍しく、こざっぱりとしたポロシャツとスウェットパンツが練習スタイルだった。体を反転させるのがとても早く、どうしても取れないロナウジーニョのドリブルに立ち向かうような感じだった。

サンティヨさんは、当時まだ独身で、実家暮らしだった。たまに家でレッスンをすると、窓の向こうから、スナルトモさんがチラチラ見てくれていることがあった。それからは、少しずつ口をきいてくれるようになった。少し色の入った眼鏡をかけ、丁寧にそろえた口ひげを蓄えていた。70年代製のフィアットに乗り、日本でいうと「新星」や「若葉」のような「クボン・ジュルック(みかん畑)」という煙草を吸っていた。半袖の茶色いバティックを粋に着こなし、若い恋人がたくさんいるという噂だった。ちょっと不良っぽくて、口のうまいおじさんという風情で、僕をからかってくれたりした。こんなことも、荒型には必要な資質なのだろう。

もう退職するほどの年だったので、舞台で踊ることはなかったが、ちょっと見本を見せたりする時に踊ることがあった。圧倒的だった。息子のサンティヨさんもキレがあって、すごかったが、ものが違う感じだった。

たまたまこの日は、こどもの日だったので、ブナとイウィンさんと王子公園へ遊びに行っていた。ライオンもトラも眠そうにしていたが、クマの檻の前に来て、ハッとした。その大きさといい、動きといい、迫力がすごかった。体の中心部に強力な発電機とモーターがあり、脊椎で動いている感じ。

ちょっと変な話だが、スナルトモさんのことを思い出した。人間離れしているのだ。ジャワ舞踊には、いくつかのキャラクターの種類があるが、猿や百人力の怪物などを得意とする舞踊家には、多かれ少なかれ、こんな動物的な要素が必要なのかもしれない。

スナルトモさんは学校の先生だが、自身は共同体や王宮で舞踊を習った世代である。この世代より若くなると、芸術高校や芸術大学に通う世代になる。もちろん、上手な人はたくさんいるんだけど、部屋に入ってきただけで、ジャワのにおいが立ちこめるような舞踊家はいなくなってきた。学校だと、ジャワ舞踊以外にもバリ舞踊やスンダ舞踊を習うし、生活様式もどんどん変わってきているので、仕方がない。

そんな貴重な人に出会えて、話が出来て、舞踊が見られたことを感謝するしかないのか。
(佐久間新)


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