Gamelan Marga Sari -Blog-

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即興と時計
9月24日から、イギリスとオーストリアへ旅をしました。イングランド、スコットランド、そしてオーストリアのクレムスで、ワークショップとコンサートと即興パフォーマンス三昧の日々でした。少しずつ振り返りたいと思っています。

9月24日月曜日
ある公募に応募する書類を作成していて、完全に徹夜だった。書類は関空のベンチで完成し、空港の郵便局から郵送した。イギリスへ一緒に行く野村誠さんと待ち合わせるのも忘れていた。ベンチで待っていると、茶色のコートを着た野村クンが現れた。

イミグレーションを越えて、デューティーフリーショップの前を歩いていて、ふと上を見ると、ブナとイウィンさんがガラスの向こうで手を振っていた。最後まで見送ってくれてありがとう。

アムステルダム行きのKLM機内で、先日の碧水ホールで行われたワンデーガムランピクニックの話になった。

即興の前、舞台監督のHIROSさんから、30分、最長でも40分で即興を終えて欲しいとリクエストがあった。僕は、舞台横の壁には時計があるし、まぁ大丈夫ですよ、と答えた。即興は、僕と鈴木悦久さんの場面から始まった。そこに寺内大輔さん、野村クンも入って、即興は進んでいった。途中で、子供達が入りたそうだったので、少しちょっかいをかけてみた。小さなやりとりが段々発展して、子供達が舞台で賑やかに暴れ始めた。僕は、少し時間が気になってきた。子供達とダンスしながら、時計を見ようかと思った。客席に背を向ける場面があったので、何度も時計を見ようと思った。でも見られなかった。

という話を僕がすると、野村クンは、
僕は、時計を見る方の側だからねぇ、
とニヤニヤしている。

僕は、「桃太郎」でも、「さあトーマス」でも、最前線でホコリまみれになって、ヨダレまみれになって、ダンスするタイプだ。入り込んで、没入する感じ。そこで時計を見てしまうと、なんだか自分がデートの最中に帰りを気にする女の子になったようで、お客さんをがっかりさせる気がするのだ。

でも、そこからいろいろ考えてみた。
「さあトーマス」にも出演したたんぽぽの家の愛ちゃんは、僕と二人で即興ダンスの練習をしていても、時計を見ることがある。
大相撲は、いつも6時前に終わる。
ガムランの演奏は、長さは自由に変えられるが、やはり適当な長さがある。
ジャワのラジオ局のライブ録音では、ガムラン演奏は秒単位で時報に合わせて終了させられる。

僕自身、ジャワ舞踊を踊っている時は、冷静沈着で、視線も不動で、時間のことも考えない。でも、どうしても必要なら、時計を見られる気がするのだ。目線は向けなくても、視野の端で時計を確認することはできるような気がする。そうしても、集中力がとぎれないような気がするのだ。

2年前、「桃太郎」の第5場を初めて上演した。最後の場面で鬼のソロダンスをした。第4場でのカオスを経て、あらわれた空気の中でソロを踊るのは難しいが、とても重要なシーンだ。練習の時、何度もダメ出しが出た。野村クンからも、鬼は踊ってはいけない、という厳しいダメ出しが出た。

本番前日のリハの時、面が半分割れて、口がむき出しになった。半分飛び出した自分と鬼が同居して、自分なりにとてもいい感じでダンスできた。ソロダンスを30分近く続けた。しかし、長すぎるという、ダメ出しが出た。それで、本番の時、時間のことに気が取られ、すこし没入することが遮られた。それでも、入り込めない自分と格闘しながらダンスを始め、やがてダンスがうまく流れ出したところで、ちらりと時計を見た。


即興のダンスを踊る時、僕は、周りの環境や他者の動きを鋭敏に感知し、次の展開をめまぐるしく考える。

没入する
そこから抜け出し、上から俯瞰する
緊張をひらりとかわす
他者と共振し、大きな渦を作る
渦をスパッと断ち切る

そんな自由自在な存在になれれば、最高だろう。

アムステルダムでトランジットし、再びKLM機に乗り、マンチェスターに向かった。徹夜明けだったが旅で興奮しているのか、目が冴えたまま、現地時間18時40分にマンチェスターに着いた。ここから電車に乗り換えて、目的地のハダスフィールドを目指した。長い旅の長い一日目はもう少し続く。
(佐久間新)

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