Gamelan Marga Sari -Blog-

*ガムラン マルガサリ*のメンバーによるブログです.
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水のダンス まわりがダンスしはじめるダンス
5月24日
大阪大学コミュニケーションデザインセンターのオレンジショップで「からだトーク/水のダンス」を開催しました。ゲストは、僕と理学療法士の玉地雅浩さん。ホストは、哲学カフェの本間直樹さんと看護学の西村ユミさん。

オレンジショップの中では、大きなお鍋,グラスなどを使ったワーク。

理学部裏の空き地とそこにできた水たまりでは、プール、バケツなどを使ったワーク。

これをいつものごとく、本間さんが撮影。本間さんは映像作家でもあります。しかも、かなりユニークな。
この日の映像は、鍋の中の水,グラスの水,プールの水,水たまりの波紋、といった感じで,人よりも水に焦点が当っています。

しかし、これもダンスの映像だと思うのです。
本間さんいわく,僕のダンスは,からだだけでなく、あるいはからだよりも、まわりの人や環境と関わって、まわりがダンスしはじめるように見えるところが、面白いそうです。

本間さんとは,今後,映像作品も作っていこう、という話が盛り上がりつつあります。

かなり渋い映像ですが、僕は気に入っています。
水たまりのダンス 夜なんですが,実際よりかなり明るく映りますね。
http://www.youtube.com/watch?v=xyPqHOcsecs

グラスの水のダンス 手の甲にグラスを置いていると,ふっと、水と一体化する瞬間があります。そうなるともう、なかなか落ちない。
http://www.youtube.com/watch#!v=ABvEJ3DZXFI

鍋の水のダンス これは、重かった。もっとこぼさずにできると思ったけど,かなり難しかった。もう少し小さいので、またやりたいなあ。
http://www.youtube.com/watch#!v=5MZxdW5u04A

プールの水のダンス みんな気持ちよさそう。
http://www.youtube.com/watch?v=jo-ZYgIlc68
(佐久間新)

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セントーから銭湯、そしてカエルの集まり
5月22日
14時45分 ブナの参観終了後,天神橋筋の元銭湯だったアートセントーへ向かう。ガムランエイドのイベントがあるのだ。15時45分に到着すると,何やらまじめなフォーラムが行われていた。元女風呂の脱衣所で、簡単にメークして,ジャワの衣装に着替える。ブナは、番台に座ってご機嫌。男風呂にはガムラン。湯船に沈んでいたり,洗い場に並んでいたり。まずは,ジャワの古典舞踊を踊る。そして、たんぽぽの家の岡部太郎さんのお湯を沸かすパフォーマンスに絡む。そこから、だんだんとダンスに。ブナが最後を締めてくれる。即興ダンサーのYangjahさんも来ていたので,絡んでくれるかと思ったが,インドの絵巻物の東野健一さん並んでニヤニヤして見てるばっかり。撮影は、本間直樹さん。彼がいるとどんどん何でもyou tubeにアップされていく。

ジャワ古典舞踊 男風呂編 
演奏:マルガサリ、HANA☆JOSS、岡戸香里、近藤久子、HIROS、他
http://www.youtube.com/watch?v=44_t_HZ26s8
http://www.youtube.com/watch?v=U8p9baV8sB4

岡部さんの湯気のパフォーマンス+佐久間新から、やがてお湯のダンス
演奏:HIROS他
湯気ダンス
http://www.youtube.com/watch?v=uGA0WGz3s58
お湯ダンス
http://www.youtube.com/watch?v=TV0KACRn230

その後で、10月23日に千里万博記念公園の太陽の塔の下で行うウドロウドロにチャレンジ。ガムラン関係者が多かったからか、風呂場で反響がよかったからか,とてもいい音になった。駆けつけてくれた作曲者ホセ・マセダのお弟子さんのアルセニオ・ニコラスさんも大満足の様子。
マセダ ウドロウドロ 男風呂編
http://www.youtube.com/watch?v=B1GkHYHzGUk

18時30分終了。風呂場でムンムン汗をかいたので,本物の銭湯へ。天六温泉。近くの定食屋でご飯を食べて,帰路へ。この日の晩は,ダンサーの砂連尾理さんが、我が家へカエルの声を聞きにいきたいと言い出したことから,盛り上がって、「朝までカエルの集まり」をすることになっていた。マルガサリの西田ゆりちゃんを乗せて,高槻の砂連尾さん宅経由で豊能の自宅へ。11時前には、全員が集合した。イウィンさん、砂連尾さん、西田ゆりちゃん、美術家できこりの小池芽英子さん、神戸大学コミュニティミュージック関係の三宅博子さん、中島香織さん、沼田里衣さん、シマダさん、デザインをしているカコさん。乾杯をして,ひとしきりおしゃべり。11時30分から、さっそくカエルの声を愛でに外へ出る。

我が家の東側の庇の下には、サウンドアーティストの鈴木昭男さんの「点音(おとだて)」のプレートがある。そこに立って耳をすますための標識。左右5?600メートル、奥行き3?400メートルの棚田の水が黒く光っているのが微かに見える。山をバックにした何万匹のカエルの音がオーケストラのように聞こえる。それぞれの田んぼのカエルグループが音量を変えたり,違う種類のカエルが鳴き出したりするのが手に取るように分かる。それから、みんな思い思いに夜中の田んぼへ出て行った。空からは今にも雨が落ちてきそうだった。

家の前の坂道に残った僕と砂連尾さんは、すこし坂を寝返りしたり,重力を感じながら,坂をゆっくりと歩いたりしてみた。一緒に踊る機会が、遠くない先にやってきそうな予感。

まもなく、空から雨がしたたって来た。カエルの声は一層とにぎやかになった。田んぼにいるよりも、「点音」で聞いた方がにぎやかに聞こえた。部屋に戻って,能勢の地酒「秋鹿」などを飲みながら,いろいろと話が盛り上がった。1時間おきくらいに何度か、田んぼへ聞きに行った。雨はだんだんときつくなっていった。仮眠をとる人も。僕はなんとか起き続け,ちびりちびりと飲んだ。午前4時前,空が白み始めたので,みんなを起こして、最後のセッションへ。雨が降っていたので,奇跡のアンサンブルとはちょっと違う音だったが,すこしずつ鳥の声が増え,カエルの声は、よせてはかえす波のように、大小を繰り返しながら,すこしずつおさまっていった。
(佐久間新)

パーティ三昧
5月11日
石橋でやっているジャワ舞踊教室が終わってストレッチをしていると,野村誠さんから電話がかかって来た。コンテンポラリーダンスの砂連尾理さんの家にいるから、遊びに来ないかと。どうやら、野村さんは僕たちを引き合わせたいようなのだ。僕は昔から、「フットワークは軽く,迷ったら行く!」をモットーにしているので,この日は早朝から出ずっぱりだったんだけど,行くことにした。高槻のお宅まで車で45分。手巻き寿司を囲んでパーティ,野村誠さん、藪公美子さん、砂連尾理さんと奥さんの瞳さん。砂連尾さんがハイテンションで、山に登る話,パラレルワールドの話,波の話などを語ってくれる。こっちも、テンションをあげて、坂を転がる話,子どもが老人に見える話,田んぼがつながっている話などで、応戦した。

野村誠さんがブログに書いている。理×新
http://d.hatena.ne.jp/makotonomura/20100511#p1

5月13日
19時から梅田のヒルトン・ウェストの13階にあるニコンギャラリーで、柴田れいこさんの展覧会と写真集「Sakura さくら」の記念パーティ。ブナとイウィンさんも一緒。梅田のこっちの方へ来るのは久しぶり。すけすけガラスの向こうをライトに照らされたエレベーターがすごい勢いで行き交っている。田舎暮らしに慣れたからだがざわざわ騒いでいる。嫌な感じではない。

柴田さんは,日本で暮らす外国人女性の写真を撮っていて,4年くらい前にイウィンさんを撮りに我が家へやって来た。雑魚寝で泊ってもらって,早朝の田んぼにイウィンさんと撮影に出かけた。それからしばらくして,黄金に輝く稲穂の前で曼珠沙華色のクバヤ(ジャワの伝統衣装)を着たイウィンさんの写真が送られて来た。とてもきれいに撮れていた。そして先日、立派な写真集が送られて来た。何十人もの外国人女性が民族衣装を来て,田んぼや神社や街角にたたずんだポートレイト集。

IMG_2727_convert_20100409002651_20100519144217.jpg


会場に入ると何人かのモデルになった外国人女性が来ていた。イウィンさんも声をかけられる。当たり前だが,みんな日本語でしゃべっている。ごちそうが出た後でイウィンさんに、「踊ったら?」と声をかけた。はじめは迷っていたが,気づけば自分で段取りをして,僕も引っ張り出された。ワイングラスで伴奏しながら、ジャワの歌を歌った。イウィンさんは、ワインを少し飲んでいたので,気持ちよく踊っていた。

5月14日
18時30分から大阪市大の高原記念館で、西純一さんの展覧会「ホワイト・バランス ― ある肖像」とトークとパーティがあった。イウィンさんとブナも一緒。夕暮れの大阪市大は、アメリカ製のグリーンのガラスがはまった巨大基地のような図書館とヤシの木がすくっと伸びた前庭がある古い2階建ての本部の建築が対照的。高原記念館は、ヤシの横にあるオシャレなギャラリー兼研究室。

西さんは,こころに病を抱えながら,森の中でひっそりと暮らしている。僕の家から歩いて行ける距離だ。山に暮らすようになって,お互い10年以上,なんとなく段々と親近感がわいている。去年,彼は中川真さんに100枚の自画像を描くように言われたそうだ。この春に、99枚描けたので,この展覧会になった。

会場に入ると,すでにトークが進んでいた。白いジャージに白いジャケットの西さんと中川真さん。「西さん,ほんとのこと話してますか?」と真さんが突っ込む。壁には,99枚の自画像。どれにも、眼鏡が描かれているが、表情はよくわからない。自画像の上に絵の具が流れ出たシリーズが続く。「自画像を描いてしまうと,もう描くことを止めることは出来ないんです。」「自分は甘えていたんです。弱いんです。」そのことを受け止めて行く過程。自画像は、すこし晴れやかになって行く。

僕も、即興ダンスをすると,もうこれは止めることはできない、と思う。ダンスが生きていること,生きていることがダンスになってしまう。

トーク終了後はパーティ。市大の近所にある韓国料理屋のオードブル。これがなかなかおいしかった。チヂミ、タコ酢、タケノコのピリ辛,フキの炊いたん、きずし、などなど。作った人の顔が思い浮かぶ料理だった。
西さんのウェブサイト 日記に展覧会の写真があります。
http://www.justmystage.com/home/2222/index.html

5月15日
いい天気,暑いくらい。千里万博記念公園で、ウドロウドロの集まり。イウィンさんとブナと出かける。母と妹も来る。1000人集めないといけないので,家族総動員である。スタッフも含めると30人くらい集まった。まずは楽器作りから。で、実際に40分間演奏してみる。前回に比べると,ひとり一人が出す音や動きに工夫をしたり,まわりの音を聞けている感じがした。参加してくれた神戸大学でコミュニティミュージックを研究していた三宅博子さんが、「はじめは、となりの人や前の自分の音との微妙な差異や相互作用に気がいくのだが、それを越えて数十分たつと、疲れ&若干の飽きとあいまって、それまでと異なる耳の次元でぼわーっと全体が聞こえる瞬間がくる。」という感想を日記に書いてくれた。僕の場合は,最後の3分がとてもいい具合になって,全体が混じるのを感じた。参加してくれた砂連尾さんもそう感じたようだった。

次回の集まりは、6月12日@千里万博記念公園みんぱくです。詳しくはチラシをご覧下さい。
・ホームページ(チラシだけ)
http://www.1000ongaku.com/

この日の様子は、you tubeで見られます。
http://www.youtube.com/watch?v=DTDluM-3F-g
http://www.youtube.com/watch?v=Lh03sQuPQwY

一旦、イウィンさんとブナを豊能へ送って,難波へ。精華小劇場で、平田オリザさんが劇場法について語るイベントがあったのだ。秋には可決される模様とのこと。課題はたくさんだが,劇場を芸術家の手に、というコンセプトには賛成だ。平田さんは、この件に関しては腹をくくっているそうだ。腹をくくってる芸術家にとっては、チャンスになるかもしれない。河内長野ラブリーホールの宮地さんたちと居酒屋へ。現場の難しさ,役場の無関心ぶりを聞く。

5月16日
奈良のたんぽぽの家の理事長、播磨靖夫さんが文部科学大臣芸術選奨を受賞したその記念のパーティが、ホテル日航奈良であった。僕は、オープニングでことほぎの舞を踊ることになっていた。ブナを豊中の実家へ預けて奈良へ。200人の立食パーティ、おなじみの顔があちらこちらに。奈良知事,奈良市長,大阪大学学長の鷲田清一さんの姿も。会場には、張りつめた空気が流れていた,その空気をゆっくりと吸い込んで、ゆったりと舞った。会場にいあわせる人たちと一緒に、いい空気を作り上げて行く,そんな感じ。気持ちよく舞えた。
DSC_0066_convert_20100519144338.jpg

わたぼうし音楽祭とエイブルアート・ムーブメント。アートを通じて、障がいある人たちに誇りと生きる勇気を与えた,あるいは、障がいある人たちのパワーで、アートに風を吹き込んだ,そんな功績が認められたのだろう。30年以上前から,ずっと戦って来た播磨さんとその戦友たちのパーティ。

2次会は,たんぽぽの家のギャラリーHANAの2階。手料理が並ぶ。モツァレラチーズとオリーブ油がかかったトマト,こんにゃくのピリ辛,大根サラダ,長芋がのったおにぎり、などなど。ホテルの食事もうまかったが,手料理が何より。みんな、お酒も進んでいる。1週間、パーティ三昧だったが,いつも車で移動なので,僕はお茶。家へ帰ってひとりで乾杯した。
(佐久間新)

ウロコ通信 97 書きました
この通信は佐久間新とウィヤンタリの公演情報と近況を知人の方々に不定期で配信しているものです。ご不要の方はご一報下さい。
    _________________________________________________________

田んぼに水が入りましたが,低温がつづき苗がビニールの下で伸び悩んでいるそうです。石垣の上にあるウロコ庵の庇の下に立つと、標高678、9メートルの鴻応山を背景にして、クレーターのように広がる棚田のカエルに指揮をしているような気持ちになります。耳をすます指揮者です。夜明け前にふと目覚めると,カエルたちが一晩かけて作り出した絶妙のアンサンブルにハッとすることがあります。鳥たちがさえずる直前の時間です。

さて、秋の公演に向けて集まりとワークショップの情報です。前回おしらせした5月15日のイベントの時間が間違っていました。ご確認ください。13時ではなくて,14時開始です。

目次
・「1000人で音楽をする日。」に向けての集まり 2010年5月15日 千里万博記念公園 ウドロッ・ウドロッ他
・からだトーク/水のダンス 2010年5月24日 大阪大学オレンジショップ 水のダンス・ワークショップ

ーコンテンツー

1件目
10月23日に行う「1000人で音楽をする日」大演奏会に向けての第2回目の集まり。本番まで,毎月一度、集まりを企画しています。気持ちのいい千里万博公園で、のんびりピクニック気分で新しい音楽のかたちにトライしていきたいと思っています。明日の天気予報は晴れ、しかも久々に暖かいようです。まさに、ピクニック日和です。明日のタイトルは、ピクニック「30人で音楽をする日」です。目標30人。みなさん、お誘い合わせの上、ぜひお越し下さい。先着順で、みんぱくの入場券をプレゼントします。

まず、竹を使って簡単な楽器を作ります。そして、フィリピンの作曲家ホセ・マセダが作った数十人から1000人のための作品「UDLOT-UDLOT」を演奏します。さらに、小島剛さん、HIROSさん、僕のアイデアを元に、みんなで音を楽しみたいと思います。どなたでも参加できます。音楽やダンス経験は不問です。

日時:2010年5月15日 14:00?16:00
場所:民族学博物館地下展示室前 (大阪 吹田 千里万博記念公園)
  http://www.minpaku.ac.jp/museum/information/access.html
参加費は無料ですが、モノレールでお越しの方は,自然文化公園の入場券(250円)が必要です。
主催:財団法人千里文化財団
企画・制作:「1000人で音楽をする日」制作実行委員会

2件目
からだトーク/水のダンス
(紹介文 引用)大阪大学コミュニケーションデザインセンターと行っているワークショップシリーズです。今回の「からだトーク」では、ジャワ舞踊家の佐久間さん、理学療法士の玉地さんと一緒に,水 の重さ,温度,浮力などを感じたり,実験したりして,からだを動かします。ジャワ舞踊の神髄は、「水のように流れる」です。水を感じることか ら,ダンスに迫ってみませんか。
http://cscd.osaka-u.ac.jp/activity/view/508?mode=0&page=1&discipline=&activity=&staff=&keyword=

前回は「湯気」をテーマにしました。映像が見られますので,ぜひご覧下さい。
湯気ダンス
http://www.youtube.com/watch?v=WYDz95UZkS8&feature=related
影ダンス
http://www.youtube.com/watch?v=Ko-LdXAp46c&feature=related

日時:2010年5月24日 18:00?21:00
場所:大阪大学オレンジショップ (大阪 豊中 大阪大学豊中キャンパス)
   http://www.cscd.osaka-u.ac.jp/about/access.html
ゲスト 佐久間新(ジャワ舞踊家)、玉地雅浩(藍野大学)
マスター 西村ユミ、本間直樹
参加費無料
主催:大阪大学コミュニケーションデザインセンター

明日から暖かくなるそうです。ぜひ、外の空気を一緒におもいっきり吸い込みましょう。
(佐久間新)

可能性あり、そして、全く進歩なし
?先日遊びに来たジャワ留学が決まったやぶちゃんに話した、ジャワの先生のエピソードの続き?


20年近く前,ソロの郊外にあるS先生の家へ、2ヶ月間舞踊を習いに通った。風神の子である勇者ビモの飾りがある鉄柵を入ると,古い赤いバンが停まっていて,中庭にはナマズを飼っている池がある。鳩の小屋もある。横には、背の高いパンノキがあって、時折天狗のうちわのような巨大な葉っぱが勢いよく落ちてくる。少し薄暗い居間へ入ると,緑の薄いカーペットの上にガムランが並んでいる。壁には、若かりし先生が正装した写真が掛かっている。ヒンヤリとして鈍く光った床の上でレッスンを受けた。汗がタイルに滴り落ちた。犬が横切ると,先生はキックを入れる。踊りのことなんて,まだまだ何も分からなかった。先生や先生の家に下宿していた芸術高校の生徒だったN君に言われるがまま、ただ汗を流した。

S先生といると、魔法使いのように思えた。もちろん、舞踊はうまいし、楽器もとびっきりうまい。それだけじゃなくって、ちょいとヒゲをさすれば,ジャワのごちそうが出てくるし、ウィンクをすれば,鳩が舞い降りてくる。動かなくなったバイクもちちんぷいぷいと直すし,ちょっとした病気もツボを押して治しちゃう。音楽,ダンス,動物,バイクや車,おいしい屋台,近所のおじさん,王女様,影絵芝居の登場人物、誰とだって,何とだって,ツーカーで自由自在にコミュニケーションできるようだった。まあ、こちらがジャワのことが全然分かっていなかったと言うのこともあるが・・・。でも、いまでもその印象は変わらない。こんな人になりたいと思った。

2ヶ月の滞在は、あっという間に過ぎた。舞踊で使う盾と剣を持って,帰国した。しかし、いまだにその盾と剣を使って人前で踊ったことはない。ブナのおもちゃになっている。ジャワ舞踊は、2ヶ月習ったくらいでは何もものにならない。それでも、もっと本格的にやってみたいなあ,という気持ちがジリジリと高まった。それから少しして,日本でB先生と運命的な出会いをして,留学の決心をするが、その話はまた別の機会に。それから3年経って,僕はジャワへ留学することができた。留学中,ジャカルタに住んでいるTさんのところへ遊びに行ったとき,こんな話を聞いた。

Tさんも、以前はジャワ舞踊を習っていて,S先生とも親しい。僕がレッスンを受けた直後,S先生のところへ遊びに行って,僕の話になったらしい。「サクマが舞踊を習いにきたんだって?どうだった?」とTさんが聞くと,S先生は「Ada kemungkinan.」と答えたそうだ。adaは、あるの意。mungkinは、ふつうは「たぶん」という意味で使うが,keとanが付けば,可能性という意味になる。「可能性あり。」ということ。うれしい言葉だった。


留学をはじめて2年半が過ぎた頃,僕はプジョクスマン舞踊団の週3回ある定期公演にレギュラー出演するようになっていた。日本人の僕がこんなところで踊ってもいいのかな?お客さんは,外国人が踊っているのは見たくないんじゃないかな?などと迷うこともあったけど,僕はすっかりジャワ人の中に入り込んで,舞踊三昧の日々を過ごしていた。裸電球の下で,すり切れて湿ったビニールのござの上に座って,メイクをし、緑色のカネ製の机に用意された衣装を身につけた。前奏が始まると,薄暗い楽屋裏で、革のかぶり物を1回ギュッと締め直して,プンドポ(舞台)へと静かに歩いて進んで行った。

そんな時期,ある日プジョクスマンのプンドポで,若い舞踊家が集まって練習していると,N先生がやってきた。小柄で柔道家のようにがっしりとしているが,機敏な身のこなしをする芸術高校の舞踊科の先生。14世紀に栄えたパジャパヒト王朝の宰相ガジャマダのような、太陽の塔の彫刻のような、目と唇が力強い表情の人、今は芸術高校の校長先生になっている。そのN先生がプンドポから少し離れた階段に腰掛けて,何人かで談笑している。しかし時折,ギラリと目が光っている。こっちの練習が一段落付くと,僕の方へやって来て,言った。

「Mas Shin, akhir-akhir ini kok tidak ada kemajuan sama sekali? (マス・シン 最近,なんで全く進歩がないんだ?)」

かなりきつい調子だった。目の前が真っ暗になった。こんなことを言われたのははじめてだった。ジャワ人同士でも,舞踊の先生は教えるために生徒のからだに触れる時,「Maaf, ya(ごめんなさいね)」と言ってから、指先で肝心の骨のところをちょこっと押す。そんな温厚なジャワの先生が,こんなきつい調子になるのはとても珍しいことだ。

何日もこの言葉が頭をグルグル回った。それから、1年近く経っただろうか。プジョクスマンのメンバーで芸術大学の学生だったA君の卒業祝いのパーティが,プランバナン寺院近くのA君の実家であった時,N先生を含めて3,4人の輪ができて,ゆったりとしたおしゃべりの場になった。ジャワの田舎の家のヒンヤリとした床に座って,甘いコーヒーを飲みながら,茹でピーナッツの皮を剥く,丁字タバコの甘い匂いが漂う。N先生は,すっかり僕をジャワ舞踊の仲間として感じ始めているような接し方をしてくれた。とてもうれしかった。あの時に言葉は、そういうことだったのだ。もう、お客さんとしてではなく,本気で舞踊をする仲間として接するよ、そういう叱咤激励だったのだろう。

本気で自分を信じてやれば,そこには可能性がある。しかし、その目指す道はそんなに簡単なものではない。
(佐久間新)
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